ジオン注射療法とは
手術でしか治療ができなかった重症な内痔核に対して、手術をせずに注射だけで治療できる治療方法として注目を集めています。外痔核には使えない治療法なのでご注意ください。
なお、ジオン注射療法は、四段階注射法という繊細で特殊な手技を修得した専門医だけが施行許可を受け、行うことができる治療法です。
痔核(いぼ痔)とは
肛門の少し奥には血管に富んだ柔らかい組織があって、肛門を自然に閉じるための役割を担っています。肛門への負担が増加すると血管が太くなって蛇行し、静脈瘤のような状態になってしまいます。これが痔核です。症状が進んでうっ滞がひどくなると出血を起こすこともあります。痔核はそれをつり上げている組織によって肛門内にとどまっていますが、痔核が大きくなると支えきれなくなって痔核が肛門の外に脱出するようになります。この状態は脱肛と呼ばれます。
肛門にある歯状線より直腸側にできたものは内痔核、肛門側にできるのが外痔核です。内痔核が大きくなって脱出を起こすと外痔核をともなう内外痔核という状態が生じる場合もあります。
ジオン注射療法による日帰り治療法
脱出をともなう内痔核に対して、ジオン注射を行って痔核に流れ込む血液量を減少させ、痔核を硬く小さくして粘膜に癒着・固定させる治療法で、日帰りで治療が受けられます。注射翌日から出血が止まり、数日で痔核が脱出しないようになっていきます。痔核を切り取る手術との大きな違いは、痛みを感じない部分に注射するので、傷口からの出血や痛みといったことがないことです。
ジオン注射療法で使われる薬剤
出血状況や脱出状況を改善する硫酸アルミニウムカリウム水和物、その働きを調節するタンニン酸がジオン注射療法で用いられる薬剤の有効成分です。こうした成分の頭文字から、ALTA(アルタ)とも呼ばれています。
ジオン注射療法の内容
痛みを感じない内痔核への注射ですから、治療中に痛みを感じることはありません。
ジオン注射療法では、四段階注射法を用います。まず、痔核上側の粘膜下層、次に痔核中央の粘膜下層、さらに痔核中央の粘膜固有層に注射し、最後に痔核下側の粘膜下層への注射を行います。ひとつの痔核に4か所に分けた注射を行うことで、薬液を十分に浸透させます。複数の痔核がある場合にも治療可能です。なお、治療後は30分程度の安静にしていただきます。
ジオン注射療法の効果
投与後、早い時期
痔核へ流れ込む血液の量が減ります。翌日には出血が止まりますし、脱出の程度も軽減されていきます。
1週間~1ヶ月
痔核は次第に小さくなっていき、引き伸ばされていた支持組織が元の位置に癒着・固定します。それにより、脱出がみられなくなります。
その後
出血がなくなり、脱出や肛門のまわりの腫れも消えていきます。
治療後の経過
当日
排便後に治療を行います。
治療直後は、30分程安静にしてからご帰宅となります。休むための個室を用意しております。
翌日
来院して痔核や肛門周囲の状態を観察する診察を受けます。その日の状態で、使用する軟膏を選定します。
1週間
術後1週間目の診察をさせていただきます。この時の状態で、次回の診察予定を決めていきます。通院の頻度や期間はもともとの痔核の大きさなどにより異なります。
1〜3ヶ月後
痔核が退縮します。
副作用の報告例
当日
血圧低下、下腹部痛、嘔気(気持ちの悪さ、胃のあたりのむかつき)など
翌日
肛門部が重いなどの違和感。※数日でなくなります。
1週間
注射した部分の粘膜が硬くなる。※通常は自然に治ります。
1~3週間まで
一過性の発熱が注射後1〜3週間に現れる場合があります。内服薬で炎症を治めます。
1ヶ月~1年
この時期排便に関わる異常がありましたら、ご来院くださいませ。
排便に関するご注意
治療後、最初の排便は自宅でもかまいません。排便は5分程度で行ってください。当日の排便でも大丈夫です。
排便時に多少の出血が認められる場合もあります。1~3か月目に出血がみられる場合もあります。
便が出ない場合や、便の量が少ない場合には、ご来院ください。
治療後のご注意
ジオン注射療法は痛みが少なく、日帰りで受けられて通院で治せることが大きな特徴になっています。早く治すために、以下の点をお守りください。
入浴について
ジオン注射療法を受けた当日はシャワーが可能です。ただし、入浴は翌日からにしてください。
食事について
完治するまでアルコール類の摂取は控えてください。
刺激物(わさび、胡麻、とうがらし、カレーなど)は3週間程度控えます。
日常生活について
翌日からの仕事復帰が可能です。ただし、重いものを持つなど、お尻に力が入ることはしばらく避けてください。
オートバイ、自転車の運転は、約1週間控えます。当日自動車の運転は避けてください。
イスに腰掛ける際には深く座ってください。また、1時間ごとに立ち上がり、少し歩いてお尻への負担を緩和させてください
痔にならない日常生活のポイント
規則正しい排便習慣
- 便意があったら我慢せず、すぐトイレに行きましょう
- 排便時間は5分以内を心がけましょう
- 無理に出し切ろうと頑張らないようにしましょう
便通に良い生活
- 食物繊維や水分を積極的に摂りましょう
- お尻を清潔にしましょう
- アルコール類、香辛料などを控え、下痢にならないようにしましょう
- 適度な運動で腸の働きを整えましょう
- 便秘の原因にもなる無理なダイエットをしないようにしましょう
- 毎日、入浴して血行を良くしましょう
- 長時間、同じ姿勢をとり続けず、適度に休憩してください
- 過労を避け、ストレスをうまく解消しましょう
- 身体を冷やさないよう注意しましょう
治療費用について
ジオン注射(ALTA療法) | 約20,000円 |
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