痔ではなく「がん」の可能性も…

痔と間違われやすい「癌」とは - 大腸がんについて

痔と間違われやすい「がん」とは - 大腸がんについて近年の患者数増加にともなって、日本人に発症した癌の1位を占めるに至ったのが大腸がんです。一方で大腸がんは、他の癌に比べて早期発見のための医療技術がある程度確立されているおかげで、生存率も比較的高い状態が維持されています。しかし、結局のところは早期に発見することが生存率を高める第一条件であり、それを阻みかねないのが大腸がんの症状を痔のそれと間違えてしまう方が少なくないということです。

例えば、大腸がんの特徴的な症状の一つである肛門からの出血は痔によっても発生します。そのため、出血していることに気がついても痔になったと誤認してしまうことが往々にして起こるのです。しかも、痔なら命にまでは関わらないだろうと見過ごして、すぐには病院を訪れない方が後を絶ちません。やがて出血の繰り返しに不安を覚えてようやく受診したら実は大腸がんだったというケースが少なくありません。そのことにより、癌の発見が遅れてしまうことがあります。

こうした間違いを起こしやすい肛門からの出血という症状は、大腸がんの場合、大腸内を移動する便が大腸の内壁にできた癌を刺激することによって生じます。また、出血する血液はどす黒いことが多く、その血液が便や時には粘液に混ざった状態で排泄されます。一方、痔の場合には真っ赤な鮮血であることが多く、その血液がぽたぽたと滴り落ちたり、お尻を拭いたトイレットペーパーにつくといった状態で目につきます。しかし、こうした出血の仕方もまた、大腸がんや痔以外の病気で発生することがあるので、自己判断に頼ってはさらなる間違いを招くことにもなり、注意が必要です。

また、肛門からの出血は痔や大腸がんの他に近年増加傾向にある潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸疾患の可能性もあります。
かつての大腸がん手術では人工肛門に頼らざるをえなかったようなケースでも、近年では肛門を温存したままで手術することが可能にもなりました。しかし、あくまでそのために大切なのは、癌を早期に発見することです。したがって、肛門からの出血を発見した際には、できるだけ早く専門医に診断を任せることが何より大切です。

大腸がんの検査方法

大腸がんの検査方法大腸がんや大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病など大腸に発生する深刻な病気には、比較的共通する症状が多く現れます。中でもその代表格といえるのが下痢や便秘ですが、それ以外にも以下のような症状や条件に該当するものがある場合には、以降に紹介する大腸の検査を受けて病気を特定する必要があります。

  • お腹がはって便意はあるが、少量の下痢便しか排出されない
  • 便秘でお腹がはっているが、浣腸しても便が出ない
  • 急に便秘症になった
  • お腹が痛い
  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 肛門から出血した
  • 便が細くなる
  • 血液の混ざった便が出た
  • 急激に体重が減少した
  • ご家族に大腸がんや大腸ポリープの既往歴がある

1便潜血検査

大腸がんを診断する検査の一つとして定期健診などでもよく行われ、実際に発見のきっかけとなりやすい検査です。
大腸がんでは大腸内にできたがんからの出血が見られることが多く、その血液が便に混入しています。そこで便の表面を擦って提出し、そこに血液が含まれていないかを調べます。そして、結果が陽性の場合には改めて大腸内視鏡検査などの精密検査を行い、出血の原因を特定することになります。
簡単で体に負担がかからず、肉眼ではわからない微量の血液まで検出可能という意味では優れた方法といえますが、しかし一方で、血液の有無だけを調べるという方法の単純さゆえの欠点もあります。それは、痔など大腸がん以外の病気にも陽性反応が出ることが多く、逆に早期の大腸がんには陰性になることもあります。
陽性の結果を受けて精密検査を行い、それにより見つかった病気が癌ではなかったとしても、すみやかにその病気の治療を始められるというひとまずのメリットは享受できます。また、逆に結果が陰性だったとしても、大腸がんの存在が完全に否定されたわけではないということに十分な注意が必要です。しかし、定期検診としての有用性は高いとされており、毎年行うことでその精度上げることができます

2直腸診(直腸指診)

肛門からゴム手袋をした指を挿入して、大腸の一部である直腸の内部の感触をチェックする検査です。チェックできるのは指が届く範囲にとどまりますが、直腸に発生する癌の多くは直腸の出口寄りにできるので、この検査だけでも癌を発見できる可能性が十分にあります。

3大腸内視鏡検査

大腸がんを診断するための検査の中で現在最も精密かつ正確な方法が、この大腸内視鏡検査です。内視鏡とは先端に小型カメラのついた細くて長い管状の装置で、これを肛門から挿入し、大腸の内部を全域にわたって実際の映像として観察していきます。大腸に便が残った状態では行えない検査なので、下剤を飲んでいただき、事前に全ての便を排泄してから行われます。
基本的には便潜血検査で陽性反応の出た方が出血の原因を特定するために受ける精密検査として行われることが多いのですが、自覚症状として肛門からの出血や血液の混ざった便などの見られる方にもすすめられる検査です。

大腸がんの多くは大腸ポリープが癌化することで発生します。したがって、この検査の主な目的も大腸ポリープを発見することにあります。ポリープの段階で切除すれば、大腸がんに発展することはないので、ポリープを発見次第、内視鏡的に切除します。また、大腸がんであったとしても早期の段階であれば、内視鏡で切除し根治が可能です。

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